いよいよ全国的に梅雨の季節となってまいりました。
この時期は、気温は過ごしやすくても、ジトジトと湿気があり、食中毒菌の繁殖が旺盛になる時期でもあります。
食中毒とは、原因となる細菌、ウイルス、化学物質などに汚染された食品を食べることによって起こる下痢や嘔吐など健康被害の総称のことをいいます。
食中毒予防の基本
・食事の前は、石鹸で手を洗う
・肉・魚など、食中毒菌を持っている食材は加熱して食べる
・賞味期限内に食べる
・一度封を切った食品は、冷蔵庫で保管し、なるべく早く消費する
この基本を守ることで、食中毒にかかる危険性をかなり減らすことができますが、高齢者や小児では免疫力の低さなどから、一般成人では防御できる食中毒菌の数でも、食中毒をおこしてしまうことがあります。
特に一人暮らしの高齢者、日中独居になる高齢者では免疫力の低下以外に、以下の理由で自ら食中毒を招いてしまうこともしばしばです。
・視力など身体能力の低下
・判断力の低下
・その他
外からの帰宅時、排泄後、食事前などの手洗いを正しく行えていないことが多い
・行っていない
・石鹸を使用していない
・すすぎが不十分
・手拭きタオルを毎日交換していない
・etc
手洗いの必要性を理解していなかったり、億劫になったり、手元の汚れに気づきにくかったりするようです。
食材の調理や保管に不備がある
・肉、魚、卵など、食中毒菌が付着している食材の加熱不十分
・生野菜や果物の洗浄不足
・ずいぶん前に封をきった乾物や小麦粉等の常温保存
・いつから入っているか分からない冷凍食品
・混雑している冷蔵庫
・調理器具の不潔
高齢になると若干せっかちになる傾向があるのと、視力の低下も相まって、肉や魚の調理時に、まだ赤い生の部分が残っていても気づかずに調理を終了させてしまうことがあります。
家庭菜園で収穫した夏野菜を生のまま食べるという方も多いですが、野菜には土中に生息する食中毒菌や虫の糞などが付着していますので、生で食べる時は流水で30秒間と、念入りな洗浄が望ましいです。トマトのへたや、胡瓜のイボ、サニーレタスのひだ部分など、細かい所も丁寧に洗ってください。
パスタなどの乾麺や小麦粉などの粉類は、常温で保存が効くイメージですが、賞味期限が切れたもの、一度封を切ってしまったものは、生鮮食品と同じように考えた方がよいでしょう。乾麺は栄養がたっぷりなので、少しでも湿気を含むとカビが生えてきます。カビは食中毒菌ではありませんが、カビの生えた食品を食べるとお腹をこわすことがありますし、小麦粉なども、封の切れたすきまから、小さな虫が入り込んで繁殖することもあります。カビや虫は細菌と違い、目に見えやすいですが、高齢の方は見逃してしまうかもしれません。
いつまでも保存可能に見える冷凍庫ですが、扉の開け閉めの度に温度が変わるので、開け放している時間が長いと、菌が繁殖できる温度までに上昇していることがあります。
冷蔵庫も大きいものになると奥が深く、腰が曲がって身長が低くなると、視線の位置が下がるので、欲しいものがあっても気づかなかったり、取りたくても手が届かなかったりして、だんだん食品が増えていく傾向があります。そうなると、庫内の温度も上昇し、中で腐る食品や賞味期限切れの食品がでてきます。そして冷蔵庫の中では、古くからある食品から生み出された腐敗菌が、新しく入った食品に付着して、庫内全体が汚染されてしまいます。
鍋などの調理器具、茶碗や箸などの食器など洗浄が不十分なことも多く、食中毒にかかる原因になりえます。
もったいない精神
高齢の方は、「もったいない」と思う気持ちから食べてしまって、食中毒にかかることも多いです。周りで見守る人たちが、そうならないよう食品の在庫管理や清潔な環境を整えてあげる必要があります。
もし食中毒になったら
最初に現れる症状は下痢や嘔吐ですが、高齢者は脱水状態になりやすく、重篤な状態になることもあります。
ノロウイルスやO-157のように集団発生し死に至る重篤なものもありますが、食中毒は毎日どこかで起こっているほど、身近な病気です。症状も1日~数日下痢と嘔吐を繰り返して、菌が体外に出たら症状もなくなるものがほとんどです。もし、下痢・嘔吐の症状が出た時、すぐに下痢止めや吐き気止めを飲むと、原因が食中毒であった場合、菌が体内に留まってしまうので、すぐに薬を飲むのではなく、しばらく様子をみて症状が出た原因を考えてみてください。高齢者は下痢と嘔吐により脱水状態になるのも早く、食欲低下による栄養不足、体力消耗につながるので、下痢・嘔吐の症状が出た時はすぐに受診してください。
自分にはたいしたことのない食中毒症状でも、高齢者にはひどく症状が出ることもありますので、介護やお世話などで高齢者の周りにいる方には、自らの予防と日常生活に潜む食中毒菌に気をつけて頂きたいと思います。
担当:奥村外科胃腸科
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