ひかりメディカルケアグループでは、グループ内での研修や勉強会を定期的に行っておりますが、先日も毎年恒例となっている症例発表会が行われました。
症例発表とは、各施設・各分野によって違いはありますが、普段の業務の中で疑問に思っている事や改善したい事などを取り上げ、仮説を立て、厳選したいくつかの方法を用いて、得られた結果のデータ化と分析により、研究の成果(成果が無いということが分かった…ということもありますが…)を考察することかと思います。
5施設から演題が出され、病院からは「褥瘡委員会の取り組みと今後の課題」が発表された中で、私が一番興味深かったのは、うららデイサービスから出題された「塗り絵で楽しく認知症予防」です。
塗り絵というと、最近では「大人の塗り絵」というものも流行っていますが、主に小さな子供がするものというイメージです。私の子供が小さい時、「こどもに塗り絵をさせると良い影響を与える反面、悪い影響も与える」という話を聞いたことがありますが、ただ子供が楽しむだけのものかと思っていたので、ちょっとビックリしました。
- メリット
・集中力が養われる
・色彩感覚が養われる
・指、手、腕など、手先を動かす筋肉の発達
・自信につながる達成感を感じる
・etc
- デメリット
・他人の描いた絵に色を塗るだけの作業は、創作意欲・想像力の抑制につながる
・お手本のような絵を見て、既成概念ができてしまい、自分自身の発想に自信喪失する
・枠からはみ出さないようにと、大人からの指示等で、ストレスを溜めてしまう
・etc
我が子はいろいろ用意してみたものの、塗り絵にあまり興味を示さなかったので、効果のほどは定かではありませんが、あえて良い効果をねらって無理にやらせるものでもないのかなと思いました。
話は戻って…
うららデイサービスでは認知症予防についての支援を、様々な活動を通して提供しています。その中で今回は、幅広い年齢を通して楽しみや趣味として取り組みやすく、その効果も多くの研究から期待できる結果が認められている「塗り絵」を使用し、認知症のあるデイ利用の方に対して、効果的に援助できるように取り組んだ症例でした。
認知症予防として
いくつかの方法の中の一つ、
「ひまわりの塗り絵を使用して、正しい色を選択して部分ごとに塗り分けが出来るかのテスト」では、
4つのやり方で塗り絵に取り組んでもらい、以下のようになったそうです。
①.色を塗るそれぞれの部分に、指定の色を文字で記入したもので実施
②.色を塗る部分の外周部に、指定の色を着色したもので実施
③.見本の絵を見ながら実施
④.何も指定しない状態で実施
(結果)
明確な結果を得ることができなかったものの、色や範囲が分かり易いように工夫することが、適切な色を選択し、塗り分ける手助けとなることが分かった。
リハビリとして
脳梗塞を患った後など、手先が思うように使えず字も上手く書けないため、鉛筆を持つことを拒む方もいらっしゃいます。
絵を描くことも健康な人でも不得意ならば描きたいとは思わないでしょうが、塗り絵なら枠線で区切られた絵の中に、色鉛筆を縦横斜めに動かして色を塗ることで、素敵な作品ができます。
子供向けのキャラクターものから、美しい風景ものまでたくさんの種類がありますが、高齢者の方には何の絵か分かりやすく描かれているものが良いようです。
細かい線で複雑なものや、実際目にすることが少ないものの絵などは、絵に描かれているもの自体がイメージできなかったり、どの色を塗るのかイメージできず不安感が先行して作業が難航することがあるようです。
そうなると、楽しい塗り絵が苦痛なものとなってしまい、リハビリ目的、認知症予防目的には使用できません。
●イメージしやすくする為に
・リンゴやバナナなど、好きな食べ物の絵
・カラーイメージしやすい、季節的な絵
・動物や花など、色を迷いそうな絵の時は、見本を用意する
・作業への期待感を高める為、塗り絵を数種類用意し、自ら選択させる
などがあるようです。
塗り絵の効果
幼児のような、まだ固定概念の無い自由な発想ができるうちには向かなさそうですが、社会生活を送る中で、様々な思想や概念ができ、物事の法則性が理解できた頃に取り組むには、大変効果的なのかもしれません。脳の活性化をはかる為にも「大人の塗り絵」をやってみたいと思いました。
またこれからも、高齢者の方への塗り絵による支援の成果の事例を聞かせてもらいたいと思います。
担当:奥村外科胃腸科
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